正解:ウ
各選択肢の解説
アファイアウォールの記録に外部からのポートスキャンが残っていたが、すべて遮断されていた。
誤り。攻撃の下調べの兆候なので記録して傾向を見る価値はありますが、管理策が働いて 通信は止まっており、業務や情報への害は生じていません。「攻撃があった」ことと 「害を及ぼすおそれが高い」ことは別で、これは事象にとどまります。
イウイルス対策ソフトが、開かれる前の受信メールの添付ファイルからマルウェアを検知して隔離した。
誤り。マルウェアという言葉からインシデントと考えがちですが、開かれる前に管理策が 検知して隔離しています。対策が想定どおり働いた記録であり、同じ送信元からの ほかのメールを確かめるなどの確認はしても、事象として扱うのが基本です。
ウ退職者のアカウントが削除されずに残り、退職後にそれで顧客データベースへログインした記録が見つかった。
正解。権限のない者が顧客情報に触れた可能性があり、漏えいなど事業や情報資産に害が及ぶ おそれが高い状態です。多くの事象のうち、こうしたものをインシデントとして組織で対応します。
エ修正プログラムの適用が1台だけ予定より遅れていたが、その間に不審な通信や操作の記録はなかった。
誤り。管理策が予定どおり行われていない状態で、見過ごしてよいものではありませんが、 それによる害の兆しは確認されていません。管理策の不具合の可能性を示す事象として記録し、 適用を済ませて是正します。
理解を深めるために
「気になること」と「害が及びそうなこと」を分ける
情報セキュリティ事象は、セキュリティに関係しそうな出来事のすべてです。方針への違反や 管理策の不具合の可能性、正体の分からない状況などを広く含みます。そのうち、 事業や情報資産に害が及ぶおそれが高いものを、情報セキュリティインシデントと呼びます。 すべての事象をインシデントとして扱うと対応が追いつかず、本当に危ないものが埋もれます。 逆に、インシデントを事象として流すと、被害が広がってから気づくことになります。
なぜ区別するのか
- 事象は記録して傾向を見る対象。管理策が働いた記録や、小さな不具合が中心
- インシデントは組織として対応する対象。封じ込め、影響範囲の調査、関係者への報告などを始める
- 区別の目安は「管理策が働いたか」「害の兆しがあるか」。権限のない者が情報に触れた可能性があれば、 被害が確定していなくてもインシデントとして扱う
報告する側(従業員)は区別せず、気づいたことを窓口へすぐ報告します。 区別するのは、報告を受けた担当者の仕事です。
混同しやすいものとの違い
| 報告 | 扱い | 理由 |
|---|---|---|
| 退職者アカウントでの顧客DBへのログイン | インシデント | 権限のない者が情報に触れた可能性がある |
| すべて遮断されたポートスキャン | 事象 | 管理策が働き、害は生じていない |
| 開かれる前に検知・隔離されたマルウェア | 事象 | 管理策が想定どおり働いた |
| 修正プログラムの適用の遅れ | 事象 | 管理策の不具合の可能性はあるが、害の兆しはない |
「攻撃」「マルウェア」という言葉の強さで判断せず、管理策が止めたのか、すり抜けて 情報に届いたのかで見分けます。