正解:ウ
各選択肢の解説
ア責任追跡性
誤り。責任追跡性は、操作をした利用者まで一意にたどれることです。今回は自社のログで 取引先のIDによる操作だとたどれており、責任追跡性はすでにありました。足りなかったのは、 その記録を相手が否定できない証拠にすることです。
イ完全性
誤り。完全性は、情報が正確で、改ざんや欠落がないことです。電子署名は改ざんの検知にも 使えますが、今回のきっかけはデータが壊れたことではなく、相手が発注したこと自体を 認めなかったことです。何で困ったのかで切り分けます。
ウ否認防止
正解。否認防止は、行為をした本人が後から「していない」と否定できないようにすることです。 取引先自身の秘密鍵で付けた署名は自社では作れないので、自社の記録と違い、第三者にも示せる証拠になります。
エ真正性
誤り。真正性は、利用者やデータが主張どおりの本物であること、つまりなりすましでないことです。 今回は発注の時点で誰かが取引先を装ったわけではなく、本物の取引先が後から 発注の事実を否定したことが問題です。
理解を深めるために
「やっていない」と言わせないのが否認防止
自社のログに「取引先のIDで発注された」と残っていても、そのログを持っているのは自社です。 相手からすれば「都合よく書き換えたのではないか」と言えてしまいます。 自分の手元の記録は、相手に対しては証拠として弱いのです。
取引先自身の秘密鍵で電子署名を付けてもらえば、事情が変わります。秘密鍵を持っているのは 取引先だけなので、署名付きの発注データは自社が後から作ったり書き換えたりできません。 だから第三者にも「取引先が発注した」と示せます。
なぜ責任追跡性だけでは足りないのか
- 責任追跡性: 操作と利用者を結び付け、誰がやったかをたどれる状態にする(個別ID、操作ログ)
- 否認防止: たどれた結果を、本人が否定できない証拠にする(電子署名、タイムスタンプ)
否認防止は責任追跡性の一段先にあります。社内の不正調査ならログでたどれれば足りることが 多いですが、取引先のように利害が対立しうる相手には、相手が自分で作った証拠が要ります。
混同しやすいものとの違い
| 特性 | 問いかけ | 代表的な手段 |
|---|---|---|
| 否認防止 | 本人が後から否定できないか | 電子署名、タイムスタンプ |
| 責任追跡性 | 誰の操作かをたどれるか | 個別ID、操作ログ |
| 完全性 | 改ざんや欠落がないか | ハッシュ値の照合、変更管理 |
| 真正性 | 主張どおりの本物か | 認証、電子証明書 |
電子署名は完全性や真正性の確保にも使われるため、手段から特性を選ぶと迷います。 場面の中で何に困ったのか(壊れた/偽物だった/たどれない/否定された)を読んで選びます。