正解:エ
各選択肢の解説
ア3件はどれも規程からの逸脱なので、同じ重みの指摘事項として並べ、優先順位は付けずに報告する。
誤り。逸脱であることは同じでも、残るリスクの大きさは違います。特権IDの共有は誰が操作したか追えなくなる重大な不備で、 改訂日の記載漏れとは比べられません。重みを付けずに並べると、どこから直すべきか伝わりません。
イ監査対象部門が監査中に直すと約束した不備は、監査調書から削除し、指摘事項からも外しておく。
誤り。監査調書は、どんな事実を確かめてどう判断したかを残す記録です。直す約束をしたからといって、 見つけた事実を消すと結論の裏付けが失われます。約束は改善計画として扱い、フォローアップで確かめます。
ウ不備の件数が3件と少ないので、全体の結論は「問題なし」とし、不備は口頭で伝えるだけにしておく。
誤り。結論は件数ではなく、不備がもたらすリスクの大きさで決まります。特権IDの共有は1件でも重大です。 口頭だけで済ませると記録に残らず、経営者や対象部門が改善の必要性を判断できません。
エ不備ごとに残るリスクの大きさを評価し、指摘事項とするかどうかと、改善の優先順位を決める。
正解。結論の段階では、見つけた不備を一律に扱わず、残るリスクの大きさで重要度を見極めます。 重要なものを指摘事項とし、優先順位を付けることで、限られた手間をどこに向けるべきかが伝わります。
理解を深めるために
不備は「数える」のではなく「重さを量る」
病院の検査で異常値が3つ出ても、医師は3つを同じ扱いにはしません。命に関わるものから手を打ちます。 監査の結論も同じです。見つけた不備ごとに、今の統制のもとで残るリスクの大きさを評価し、 指摘事項にするか、どれから直すべきかを決めます。
監査プロセスの「結論」で行うこと
システム監査は、予備調査で対象の全体像をつかみ、本調査で監査証拠を集め、最後に結論をまとめる流れで進みます。 経済産業省のシステム監査基準(令和5年改訂)では、結論の形成は【基準10】に置かれています。 結論の段階では、次のことを行います。
- 集めた監査証拠をもとに、見つけた不備がどんなリスクを残しているかを評価する
- その重要度から、報告書の指摘事項とするかを判断する(軽微なものは指摘事項にしないこともある)
- 指摘事項に優先順位を付け、改善提案につなげる
- 判断の根拠は監査調書に残し、結論を裏付けられるようにしておく
この問題では、特権IDの共有が最も重く、退職者IDの削除の遅れがそれに続き、改訂日の記載漏れは軽微と考えられます。
混同しやすい扱いとの違い
| 扱い | 何が足りないか |
|---|---|
| リスクの大きさで指摘事項と優先順位を決める | 結論の形成として適切 |
| すべて同じ重みで並べる | 重要度の差が伝わらない |
| 直すと約束した不備を調書から消す | 結論の裏付けが失われる |
| 件数が少なければ「問題なし」 | 件数とリスクの大きさは別 |
結論の段階を問う問題では、「件数」や「約束」ではなく「残るリスク」で判断しているかを見ます。