IPA公開のサンプル問題と、その解説
2027年度から始まる新しいITパスポート試験について、IPAが公開しているサンプル問題の全4問です。問題文と選択肢はIPAの公開資料のまま、 解説は当サイトが独自に付けています(IPAは解答例のみを公開しており、解説はありません)。
これは過去問ではありません。新試験はまだ実施されていないため、過去問は存在しません。なぜ過去問が無いのか
公開されているのはマインド・スタンス分野、データマネジメント分野、情報倫理・AI倫理分野の3分野だけです。 新試験で新しくなった範囲に絞って例が示されている、と読めます。
問1 マインド・スタンス分野
ある会社では,DX を利用した業務改革を DX 推進チームが進めている。DX 推進チームでは 業務改革を進める過程で,失敗してもその都度軌道修正し,学びを得ることも成果である という方針をとっている。新しい業務フローを検討していたチームメンバーの A さんは, 失敗した場合の悪影響が不安で行動できていなかった。チームリーダーから,チームの方針 に基づいて安心して進めるようアドバイスを受けた A さんの対応として,最も適切なものは どれか。
- ア失敗が許容される範囲の小さなサイクルで改善を行い,フィードバックを得て反復的に進めていく。
- イ失敗したときのことを想定して,自ら提案せずにほかのメンバーの提案を聞く。
- ウチームリーダーから,失敗しない方法を細かく指導されるのを待つ。
- エデジタルトランスフォーメーション促進の責任者であるチームリーダーに案を出してもらうように依頼する。
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正解:ア
「失敗してもよい」と言われたときに、何をすれば方針に沿ったことになるのか。 それを行動のかたちで選ばせる問題です。
正解の「小さなサイクルで反復する」は、失敗の影響を小さく抑えたまま学びだけを取り出す やり方です。方針が求めているのは「失敗を恐れないこと」ではなく、失敗しても取り返せる 大きさで試すことだと読めます。
残り三つは、いずれも判断を自分以外へ預ける対応です。他のメンバーの提案を聞く、 指導を待つ、リーダーに案を出してもらう。どれも失敗は避けられますが、A さんが 行動していない状態は変わりません。方針は行動を促すためのものなので、これらは 方針に沿った対応になりません。
この分野は知識を問う問題になりにくく、場面の中でどう振る舞うかを選ばせる形が 中心になります。用語を覚えるより、方針や役割から逆算して行動を選ぶ練習が要ります。
問2 データマネジメント分野
データマネジメントが十分に行われていない場合に生じる“データのサイロ化”に関する 記述として,最も適切なものはどれか。
- ア収集したデータが,意味や来歴を説明する情報を伴わないまま蓄積され,内容を確認できず利用できない。
- イ組織内の各部門が個別に保持するデータが相互に連携されず,組織横断での参照及び統合ができない。
- ウ同一の項目に表記の異なる値が混在し,集計した結果が実態と一致しない。
- エ保管期限を過ぎたデータが廃棄されずに残り,管理の対象が増え続ける。
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正解:イ
サイロは、農場で穀物をためておく細長い倉庫です。一本ずつ独立していて、隣とは つながっていない。 その形がそのまま比喩になっています。部門ごとにデータを 抱え込み、横から参照できない状態がデータのサイロ化です。
注目したいのは、誤答の三つもどれもデータマネジメントの失敗として実在することです。
| 記述 | これは何の問題か |
|---|---|
| 意味や来歴が分からない | メタデータの欠如 |
| 部門ごとに分断されている | サイロ化 |
| 表記ゆれで集計が合わない | データ品質(一貫性)の問題 |
| 期限切れが残り続ける | ライフサイクル管理の不備 |
つまりこの問題は「サイロ化とは何か」ではなく、四つの failure を見分けられるかを 問うています。用語を一つずつ覚えるだけでは足りず、それぞれがどこで起きる問題なのか まで押さえる必要がある、という出題の仕方です。
見分ける手がかりは、その問題がデータの置き場所の話か、中身の話か、期間の話かです。 サイロ化は置き場所が分かれていることそのものを指します。
問3 データマネジメント分野
顧客データに関するメタデータはどれか。
- ア顧客ごとに登録された氏名及び住所の値
- イ顧客ごとの取引金額の合計
- ウ顧客番号の採番の規則や粒度の説明
- エ前月末時点の顧客数
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正解:ウ
メタデータは「データについてのデータ」です。中身そのものではなく、中身を 読むための説明書にあたります。
顧客番号の採番規則がそれです。「先頭2桁が支店コード」「1顧客につき1番号」といった 説明は、顧客データの値ではありませんが、これが無いと値の意味が分かりません。
誤答の三つは、いずれもデータそのものです。
| 選択肢 | 何にあたるか |
|---|---|
| 氏名・住所の値 | データ本体 |
| 取引金額の合計 | データを集計した結果 |
| 採番の規則や粒度の説明 | メタデータ |
| 前月末時点の顧客数 | データを集計した結果 |
集計した結果はメタデータではありません。 ここが引っかかりやすい箇所です。 顧客数は「データの件数」という、データについての情報に見えます。しかし集計値は 値を数えて作った新しいデータであって、値の読み方を説明するものではありません。
見分け方は「それが無かったら、データの意味が分からなくなるか」です。 採番規則が無ければ顧客番号は読めませんが、顧客数が無くても顧客データは読めます。
問4 情報倫理・AI倫理分野
A 社では,インターネット上で提供されている生成 AI サービスを,自社の事業活動で 利用することを検討している。利用における留意事項として,適切なものだけを全て 挙げたものはどれか。 a A 社では B 社と秘密保持契約を結んだ上で共同研究を行っているが,共同研究に 関する機密情報を生成 AI に入力した場合,B 社との秘密保持契約に抵触するおそれ がある。 b A 社では顧客の個人情報を取得し,マーケティング活動に利用しているが,顧客 分析を目的として個人情報を生成 AI に入力した場合,第三者提供に該当するおそれ がある。 c A 社では自社が属する業界の動向に関して情報収集を行い,その結果を製品開発に 利用しているが,生成 AI を用いて情報収集を行った場合,得られた情報に誤りが 含まれるおそれがある。
- アa,b
- イa,b,c
- ウb,c
- エc
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正解:イ
a・b・c のすべてが正しいという問題です。組合せ型では「一つくらい混ぜてあるはず」 と疑いがちですが、ここでは全部が実際に起きうるリスクとして挙がっています。
三つはそれぞれ別の法域・別の性質のリスクです。
| 記述 | 何のリスクか |
|---|---|
| a 機密情報の入力 | 契約違反(秘密保持契約) |
| b 個人情報の入力 | 法令違反(第三者提供にあたるおそれ) |
| c 誤った情報の混入 | 出力の信頼性(ハルシネーション) |
a と b は「入れてはいけないものを入れる」リスク、c は「出てきたものを信じる」 リスクです。方向が逆である点に注目してください。生成AIの注意点は、入力側と 出力側の両方にあります。
b が「第三者提供に該当するおそれ」と書かれているのは、外部の事業者が提供する サービスに個人データを渡す行為だからです。社内のツールに入力するのとは扱いが 変わりうる、という点がここでの論点になります。
この4問から読み取れること
サンプル問題は新設された3分野だけについて公開されています。マインド・スタンス、 データマネジメント、情報倫理・AI倫理の3つです。IPAが「ここは新しいので例を示す」と 判断した範囲だと読めます。裏を返すと、この3分野は既存の教材が最も薄いところです。
出典
問題文および選択肢の出典:ITパスポート試験 サンプル問題(2026-08-31公開)
IPA 独立行政法人情報処理推進機構が公開するPDF
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