コンピュータウイルスを作ったり配ったりする行為を処罰する刑法の規定は、 一般に「ウイルス作成罪」と呼ばれる。この通称に対応する刑法上の 正式な罪名として、最も適切なものはどれか。
正解:ウ
ア電子計算機損壊等業務妨害罪
誤り。これはコンピュータや業務用の電磁的記録を壊す、虚偽の情報を与えるなどして 人の業務を妨害したときに成立する罪です。ウイルスが手段として使われることは ありますが、着目しているのは「業務が妨害されたこと」であって、不正な指令を 与えるプログラムそのものの作成や保管ではありません。
イ電磁的記録不正作出及び供用罪
誤り。これは事務処理を誤らせる目的で、権利や義務に関する電磁的記録(口座の 残高データなど)を不正に作り出し、または使う罪です。「電磁的記録」という語が 共通するので紛らわしいのですが、対象は内容が偽られた記録であって、 コンピュータに意図しない動作をさせる「指令」ではありません。
ウ不正指令電磁的記録に関する罪
正解。2011年の刑法改正で新設された規定(第168条の2・第168条の3)の呼び方で、 作成・提供・供用・取得・保管をまとめて指します。「ウイルス作成罪」は 条文には出てこない通称です。
エ電子計算機使用詐欺罪
誤り。これはコンピュータに虚偽の情報や不正な指令を与えて、他人名義の不正送金の ように財産上の利益を得たときに成立する罪です。ウイルスが手段になることは ありますが、財産上の利益を得たことが要件であり、プログラムを作った段階を とらえる規定ではありません。
通称と正式名称がずれている罪
ニュースでも参考書でも「ウイルス作成罪」と書かれますが、刑法の条文にその言葉は 出てきません。正式には 不正指令電磁的記録に関する罪 といいます。2011年の 刑法改正で新しい章として加えられた、比較的新しい規定です。
「不正指令電磁的記録」とは、利用者の意図に反する動作をさせる不正な指令を 与える記録、平たく言えばコンピュータウイルスのことです。名前を分解すると 「不正な/指令を与える/電磁的な記録」と読めます。
刑法にあるコンピュータ関連の罪
刑法にはコンピュータに関わる罪がいくつも置かれており、名前が似ているため 混同しやすいところです。何に着目した罪なのかで整理します。
| 罪名 | 何をとらえた罪か |
|---|---|
| 不正指令電磁的記録に関する罪 | ウイルスそのものの作成・提供・供用・取得・保管 |
| 電子計算機損壊等業務妨害罪 | コンピュータを使えなくして業務を妨害したこと |
| 電子計算機使用詐欺罪 | コンピュータを使って財産上の利益を得たこと |
| 電磁的記録不正作出及び供用罪 | 内容が偽られた電磁的記録を作り出したこと |
同じウイルスを使った事件でも、プログラムを作った段階をとらえるのか、その結果として 業務が止まったことや金銭を得たことをとらえるのかで、適用される罪は変わります。 試験では、まず正式名称と「ウイルス作成罪」という通称の対応を押さえてください。