正解:エ
各選択肢の解説
ア漏えいした事実がないので、鍵の有効期限が来るまでは現状のまま使う。
誤り。この場面の弱点は鍵が盗まれることではなく、計算能力の向上で鍵を知らなくても 解読できる見込みが出てきたことです。漏えいの有無とは関係なく安全性が下がっており、 期限まで待つ理由になりません。
イ同じ1024ビットの鍵長で、新しい鍵ペアを生成して入れ替える。
誤り。鍵の入替えは、鍵が漏れたときの対応です。鍵長が足りないという問題は、 新しく作った鍵にもそのまま残ります。足りないのは鍵の秘密さではなく、鍵の長さです。
ウ秘密鍵を、取り出せない専用装置(HSM)で保管するように変える。
誤り。HSMでの保管は、秘密鍵の持ち出しを防ぐ鍵管理の対策です。 鍵長不足による解読は、公開鍵と暗号文から計算で行われるので、 秘密鍵をどこに置いても防げません。
エ十分な鍵長や推奨される方式への移行計画を立て、計画的に切り替える。
正解。方式や鍵長の危殆化には、鍵を替えるだけでなく、十分な強さの鍵長や推奨される方式へ移ります。 システムの改修や相手側の対応も要るので、期限を決めた移行計画として進めます。
理解を深めるために
鍵は盗まれていない。それでも安全ではなくなる
金庫のダイヤル錠が3桁しかなければ、鍵番号を誰にも教えていなくても、時間をかけて 全部試せば開いてしまいます。昔は「全部試すのに何百年もかかる」と言えた桁数でも、 試す道具が速くなれば安全とは言えなくなります。
暗号の鍵長も同じです。RSA暗号の安全性は、鍵長に応じた計算の難しさに支えられています。 計算機の性能や解読の手法が進むと、かつて十分だった鍵長が足りなくなります。 これを、方式(アルゴリズム・鍵長)の危殆化といいます。
なぜ「鍵の入替え」では足りないのか
危殆化には、原因の違う2種類があります。
- 鍵の危殆化: 鍵が漏れた。鍵を新しくすれば安全に戻る
- 方式・鍵長の危殆化: 方式や長さそのものが弱くなった。同じ長さの鍵を作り直しても弱いまま
国の暗号評価の取組みである CRYPTREC は、電子政府推奨暗号リストの暗号でも、 設定基準に合わない鍵長で使えば推奨暗号を使っているとはみなさないとしています。 1024ビットのRSAは、政府機関の情報システムで移行の対象とされてきた鍵長です。
移行は一度にはできないことが多いので、次の順で進めます。
- どのシステムが、どの方式と鍵長を使っているかを洗い出す
- 移行先(十分な鍵長、推奨される方式)と期限を決める
- 通信相手や証明書の発行元など、相手側の対応も合わせて切り替える
混同しやすい対応との違い
| 対応 | 何に効くか | この場面では |
|---|---|---|
| 十分な鍵長・推奨方式への移行 | 方式・鍵長の危殆化 | 弱さの原因を取り除ける |
| 同じ鍵長で鍵ペアを作り直す | 鍵の漏えい | 鍵長の弱さが残る |
| HSMで秘密鍵を保管 | 秘密鍵の持ち出し | 計算による解読は防げない |
| 漏えいがないので使い続ける | — | 漏えいと無関係に弱くなっている |
危うくなったのが「鍵そのもの」か「鍵の長さや方式」かで、入替えか移行かが分かれます。