問題 39★★☆

取引先と図面ファイルをやり取りする際、AESの共通鍵で暗号化している。 担当者が、その共通鍵を記したメモを誤って社外の宛先へ送信してしまった。 情報セキュリティの担当者が指示する対応として、最も適切なものはどれか。

正解:イ

各選択肢の解説

  1. アAESは解読が困難な方式なので、これまでどおり同じ鍵を使い続ける。

    誤り。暗号の安全性は、方式が強いことと鍵が秘密であることの両方で成り立ちます。 方式がどれほど強くても、鍵を持つ者は正規の手順で復号できます。 「解読が難しい」のは鍵を知らない者にとっての話で、鍵が漏れた後には当てはまりません。

  2. イ漏れた鍵の使用をやめ、新しい鍵を生成して安全な経路で取引先と共有し直す。

    正解。漏えいした鍵は危殆化しており、以後は安全とみなせません。使用をやめて新しい鍵に替え、 共有はメモの誤送信とは別の安全な経路で行います。旧鍵で暗号化して送ったファイルの扱いも確認します。

  3. ウAESが危殆化したとみなし、全社でAESの利用をやめて別の暗号方式に替える。

    誤り。危殆化したのは1つの鍵であって、AESという方式ではありません。方式の危殆化は、 解読法の発見や計算能力の向上で方式そのものが安全でなくなる場合を指します。 鍵の漏えいなら、その鍵を替えれば足ります。

  4. エ誤送信先に削除を依頼し、削除したとの連絡を受けたら同じ鍵を使い続ける。

    誤り。削除の依頼は被害を広げないために行ってよい措置ですが、相手が本当に消したか、 控えを残していないかは確かめられません。一度外に出た鍵は漏れたものとして扱い、 新しい鍵に替えるのが前提です。

理解を深めるために

鍵が漏れたら、錠前ではなく鍵を替える

家の合鍵を落としたとき、取るべき手は「錠前を交換する」ことです。錠前の構造がどれほど 精巧でも、合鍵を拾った人は普通に扉を開けられます。一方で、その錠前の製品自体が 欠陥品だったわけではないので、町じゅうの同じ製品を撤去する必要もありません。

暗号でも同じで、漏れたのが鍵なのか、方式そのものが破られたのかを分けて考えます。

鍵の危殆化と方式の危殆化

危殆化とは、暗号の安全性が保てなくなった状態をいいます。原因によって打つ手が違います。

  • 鍵の危殆化: 鍵が漏えいした、漏えいの疑いがある。方式は安全なままなので、その鍵を廃棄して新しい鍵に替える
  • 方式(アルゴリズム・鍵長)の危殆化: 解読法の発見や計算能力の向上で、鍵を知らなくても解読できる見込みが出てきた。方式や鍵長を移行する

今回の場面は前者です。対応の流れは次のとおりです。

  1. 漏れた鍵の使用を直ちにやめる
  2. 新しい鍵を生成し、漏れた経路とは別の安全な経路で取引先と共有する
  3. 旧鍵で暗号化して送ったファイルが第三者の手に渡っていないかを確かめ、渡っていれば内容が読まれうる前提で影響を見積もる

鍵管理では、こうした「漏れたときにどうするか」も生成・保管・更新・廃棄と並ぶ手順として決めておきます。

混同しやすい対応との違い

対応 何に効くか この場面では
鍵を廃棄して新しい鍵に替える 漏れた鍵で復号されること 漏えいの影響を断てる
方式が強いので使い続ける 鍵を知らない者による解読 鍵を持つ者には無力
方式そのものをやめる 方式の危殆化 原因が違い、過剰な対応
削除を依頼して使い続ける 拡散の抑止 削除を確かめられない

「危殆化」という語が出てきたら、危うくなったのが鍵か方式かを先に読み取ると、対応を取り違えません。

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