正解:ア
各選択肢の解説
ア労働基準法は労働契約の不履行について違約金を定めることを禁じているため、この条項は使えない。
正解。労働基準法第16条は、使用者が違約金を定めたり損害賠償額を予定したりする契約を禁じています。 実際に損害が生じたときの賠償請求や、就業規則に基づく懲戒とは別の話です。
イ社員本人が内容に同意して署名すれば有効になるので、全員から署名を集めれば足りる。
誤り。労働基準法は、当事者が合意しても下回れない最低基準を定める法律です。 第16条に反する違約金の定めは、本人が署名していても無効です。 誓約書という形式が、法律の禁止を越える根拠にはなりません。
ウ誓約書ではなく就業規則に定めれば、違約金として会社が徴収できるようになる。
誤り。就業規則は法令に反してはならないとされています(労働基準法第92条)。 誓約書で禁止されている内容は、就業規則に移しても禁止のままです。 就業規則で定められるのは、上限の範囲内での減給の制裁などの懲戒です。
エ給与から差し引く減給の形にすれば、金額の制限なく違約金と同じ効果を出せる。
誤り。減給の制裁には上限があり、1回の額は平均賃金の1日分の半額、総額は1賃金支払期の賃金総額の 10分の1を超えられません(第91条)。1回10万円を差し引くような運用は、この上限に収まりません。
理解を深めるために
「違反したら罰金」は、会社と社員の間では結べない
規程違反に罰金を決めておけば抑止になる、と考えるのは自然です。しかし、会社と社員の間では、 違反したらいくら払う、とあらかじめ決める契約は労働基準法で禁じられています(第16条 賠償予定の禁止)。 違約金を恐れて辞めたくても辞められない、という昔の働かせ方を防ぐための規定です。
なぜ同意や就業規則でも変わらないのか
労働基準法は、労働条件の最低基準を定め、罰則で守らせる法律です。
- 基準に反する合意は、本人が署名していても、その部分が無効になります
- 就業規則も法令に反してはならず(第92条)、誓約書でできないことは就業規則でもできません
- 懲戒として減給する場合は、1回の額が平均賃金の1日分の半額、総額が1賃金支払期の10分の1までです(第91条)
一方で、禁じられているのは「金額をあらかじめ決めておくこと」です。社員の行為で実際に損害が出たときに 賠償を求めることや、就業規則に定めた懲戒を行うことまでは禁じられていません。 漏えい対策としては、USBメモリの利用制限などの技術的対策と、規程・教育・懲戒の整備を組み合わせるのが筋です。
混同しやすいものとの違い
| 考え方 | 扱い |
|---|---|
| 違約金・損害賠償額の予定 | 労働基準法第16条で禁止 |
| 本人の同意・署名 | 最低基準に反する合意は無効 |
| 就業規則への記載 | 法令に反する定めはできない |
| 減給の制裁 | できるが、第91条の上限の範囲内 |
誓約書は秘密保持の意識づけには役立ちますが、罰金の根拠にはなりません。 人的な管理策を設計するときは、その条項が労働法の最低基準に触れないかを確かめます。