正解:エ
各選択肢の解説
ア著作者人格権も、著作権とあわせて発注者に譲渡する旨の条項。
誤り。著作者人格権は著作者の一身に専属し、譲渡することができません(第59条)。 著作権(財産権)と同じように譲渡できると考えるのは典型的な誤解で、 このような条項を書いても、権利は著作者に残ったままです。
イ発注者を、納品される教材の著作者とする旨の条項。
誤り。著作者は、実際に著作物を創作した者です。法人が著作者になるのは、 自社の業務に従事する者が職務上作成した場合(職務著作)で、委託先が作ったものは当たりません。 契約で「著作者」を書き換えることはできず、譲渡できるのは著作権のほうです。
ウ譲渡の効力を生じさせるため、文化庁に著作権の登録をする旨の条項。
誤り。著作権の譲渡は、当事者の契約で効力が生じます。文化庁への登録は、 譲渡を第三者に対抗するためのもの(第77条)で、効力の発生条件ではありません。 また、登録をしても著作者人格権は移らないので、改変の問題は解決しません。
エ受託者は、発注者に対して著作者人格権を行使しない旨の条項。
正解。著作権を譲り受けても、改変を拒める同一性保持権などの著作者人格権は著作者に残ります。 そのため、実務では一般に、著作者人格権を行使しない旨の特約をあわせて定めます。
理解を深めるために
著作権を買っても、作者の「人格」は買えない
著作者の権利は、2つに分かれています。お金に換えられる著作権(財産権)と、 作者の気持ちや名誉を守る著作者人格権です。前者は売ったり譲ったりできますが、 後者は著作者その人にくっついていて、譲渡できません(第59条)。 著作権をすべて譲り受けても、作者には「勝手に内容を変えないで」と言える権利が残ります。
なぜ不行使の特約が要るのか
著作者人格権には、公表権・氏名表示権・同一性保持権があります。 このうち同一性保持権は、著作者の意に反する改変を拒める権利です。 教材を自社で手直しして使い続けたい発注者にとっては、これが残っていると改変のたびに不安が残ります。
- 著作権の譲渡では、翻案権(第27条)と二次的著作物の利用権(第28条)は、契約に明記しないと 譲渡した側に残ると推定されます(第61条第2項)。問題文の契約はここを明記済みです
- それでも著作者人格権は移らないので、著作者人格権を行使しない旨の特約を加えるのが一般的です
- 委託先の社員が職務上作った場合は、委託先の会社が著作者になります(職務著作)。 特約の相手が委託先の会社でよいのはこのためです
混同しやすいものとの違い
| 条項 | 効果 |
|---|---|
| 著作者人格権の不行使特約 | 改変などへの権利行使をしない約束を取りつける |
| 著作者人格権の譲渡 | 譲渡できないので効果がない |
| 発注者を著作者とする | 著作者は創作した者で、契約では変えられない |
| 文化庁への登録 | 第三者への対抗要件で、譲渡の効力とも人格権とも無関係 |
外部委託の契約を確認するときは、「著作権の譲渡」と「著作者人格権の扱い」を別々に見ます。 譲渡の条項だけで安心しないことが、この場面の判断の分かれ目です。