会員制Webサイトの運営を手伝っていたAは、業務を通じて知った会員のIDと パスワードを、そのサイトの会員ではない知人Bに教えた。A自身はそのIDを 使ってログインしていない。Aの行為は不正アクセス禁止法上どれに当たるか。
正解:ウ
ア他人の識別符号を用いてログインする不正アクセス行為
誤り。これは同法が禁じる不正アクセス行為そのもので、他人のIDなどを使って 実際にアクセス制御機能による制限を免れ、コンピュータを利用できる状態にする 行為です。Aはログインしていないため、この類型には当たりません。
イ他人の識別符号を自ら手に入れる識別符号の不正取得
誤り。これは他人のIDやパスワードを自分の手元に入手する行為です。Aは業務を 通じて正当に知ったうえで他人へ渡しているので、入手ではなく提供の側にあたります。 手に入れる側か渡す側かで区別します。
ウ他人の識別符号を第三者に提供する助長行為
正解。自分ではログインしていなくても、他人のIDとパスワードを権限のない者へ 渡せば、不正アクセスを可能にする道具を与えたことになります。同法はこれを 不正アクセス行為を助長する行為として別に禁じています。
エ偽サイトなどで識別符号の入力を求めるフィッシング行為
誤り。これは本物に見せかけたサイトやメールで、利用者自身にIDやパスワードを 入力させて盗み出す行為です。だます相手は識別符号の持ち主本人であり、すでに 知っている情報を第三者へ渡したAの行為とは向きが逆です。
「入る」のと「入れるようにする」のは別の行為
不正アクセス禁止法は、他人のID・パスワード(識別符号)を使ってログインする 行為だけを禁じる法律ではありません。自分は一歩も踏み込まなくても、他人が 踏み込めるように鍵を渡した人を、別の行為類型として禁じています。 家の合鍵を無断で他人に渡す行為が、侵入そのものとは別に問題になるのと同じです。
法律が分けている行為の類型
- 不正アクセス行為:他人の識別符号を用いる、またはセキュリティホールを突いて、 アクセス制御機能による制限を免れ、コンピュータを利用できる状態にする
- 不正アクセス行為を助長する行為:業務その他正当な理由がないのに、他人の 識別符号を、アクセス管理者や利用権者以外の第三者に提供する
- 識別符号の不正取得・不正保管:不正アクセスに用いる目的で、他人の識別符号を 手に入れる、手元に持ち続ける
- フィッシング行為:アクセス管理者になりすまし、利用者に識別符号の入力を求める
混同しやすいものとの違い
| 行為 | 誰が何をしたか |
|---|---|
| 助長する行為 | 他人のIDを第三者へ渡した(自分は入らない) |
| 不正アクセス行為 | 他人のIDでログインした |
| 識別符号の不正取得 | 他人のIDを自分が手に入れた |
| フィッシング行為 | 偽サイトで本人にIDを入力させようとした |
これらは条文も罰則も別に定められています。「渡したのか、手に入れたのか、 実際に入ったのか」を場面から読み取れば、どの類型かは決まります。