小売業のA社は、会員の購買履歴を外部の調査会社に渡して市場動向の分析に役立てたいが、 会員一人ひとりから同意を得るのは現実的でない。個人情報保護法に基づき、本人の同意を 得ずに購買履歴を第三者へ提供する方法として、最も適切なものはどれか。
正解:イ
ア氏名を会員IDに置き換え、IDと氏名の対応表は自社で保管したうえで提供する。
誤り。対応表が残っていて元に戻せる状態の加工は、仮名加工情報にとどまります。 仮名加工情報は社内での分析には使えますが、委託や事業承継などの場合を除き、 原則として第三者に提供できません。復元できるかどうかが匿名加工情報との違いです。
イ特定の個人を識別できず復元もできないよう加工し、項目と提供方法を公表して提供する。
正解。匿名加工情報にすれば本人にたどり着けません。定められた基準どおりに加工し、 含まれる情報の項目と提供の方法をあらかじめ公表すれば、本人の同意なく提供できます。 あわせて、渡す相手には匿名加工情報である旨を明示します。
ウ購買履歴の利用目的に第三者への提供を追加し、自社サイトで公表したうえで提供する。
誤り。利用目的の変更を公表することと、第三者提供の同意を得ることは別の手続です。 個人データを第三者に渡すには、原則として事前の本人同意が必要で、公表だけでは 代わりになりません。本人が拒否できる機会があるかどうかが分かれ目です。
エ購買履歴のファイルを暗号化し、復号のための鍵を別の経路で渡して提供する。
誤り。暗号化は輸送中の漏えいを防ぐ安全管理措置であり、渡した相手は復号すれば 本人を識別できます。中身が個人データであることは変わらないため、提供の可否は 別に判断しなければなりません。守り方の話と、渡してよいかの話は別です。
本人にたどり着けなくすれば、同意はいらない
個人データを他社へ渡すには原則として本人の同意が必要です。同意を取らずに活用したいなら、 そもそも「誰のデータか」が分からない状態まで加工するしかありません。これが匿名加工 情報の考え方です。名簿から名前を消すだけでなく、名簿に戻せる手掛かりごと断ち切るところ までやるので、本人の権利を害するおそれがなくなり、同意なしの提供が認められます。
匿名か仮名かで扱いが変わる
- 匿名加工情報:特定の個人を識別できず、元の個人情報に復元できないように、委員会規則の 基準に従って加工したもの。識別できないことと復元できないことの両方が要る。 第三者へ提供するときは、含まれる情報の項目と提供の方法をあらかじめ公表し、 渡す相手には匿名加工情報である旨を明示する。この手順を踏めば本人の同意は要らない
- 仮名加工情報:他の情報と照合しなければ本人が分からない状態まで加工したもの。対応表を 持っていれば元に戻せるため、社内の分析には使えるが、原則として第三者提供はできない
「どこまで戻せなくしたか」が、そのまま「どこまで自由に使えるか」に対応します。
混同しやすいものとの違い
| 手段 | できること |
|---|---|
| 匿名加工情報 | 復元不可能に加工。公表すれば同意なく第三者提供できる |
| 仮名加工情報 | 照合すれば復元可能。原則として第三者提供できない |
| 暗号化 | 安全に運ぶための措置。提供してよいかどうかは別問題 |
試験では「同意を取らずに他社へ渡したい」という場面で問われます。復元できるか、 第三者提供が認められるかの2点で選択肢を切り分けてください。